13歳の君へ

小山恭輔

日鉄住金P&E株式会社 / パラ競泳バタフライ日本代表

突然の脳梗塞で倒れ、君は今生きる気力をなくしていることと思います。
バスケをしたり、野球をしたり、そんな当たり前にできていたことが急にできなくなってしまった。これから君は三日三晩泣き続けて、めそめそすることになるでしょう。

そんな君を支えてくれるのが母さんです。
「泣けるだけ泣きなさい。泣けるってことは立ち上がるチャンスだよ。」
「後ろを振り返っても何も見つからない。ただ前だけを見て生きなさい。」
君はこの言葉に救われるでしょう。

友達や学校の先生たちからの千羽鶴と手紙も母さんから渡されます。
その時の君は、脳圧が高くて、面会謝絶なんだけれど、本当に本当に嬉しい気持ちになる。
「学校に戻りたい。」
落ち込む君をその一心に変えてくれるのがその千羽鶴と手紙です。

それからの君はすごく強い。普通リハビリは2時間くらいで終わるのに、単純運動男の君は自主リハビリをプラス6時間。これができるのは、まぎれもなく、友達や学校の先生たちのところに戻りたい、ただただその気持ちがあったからでしょう。

退院するまで、君は2ヶ月間学校に行けない。この時の君もとても不安になる。
でも、
「出てかなきゃ何も変わらないでしょ!」
と何事にも肝が据わることになるのもこの時です。

2ヶ月ぶりに学校に行ってみても、なんてことはない。
友達は、普通に今まで通り「よ!おはよ!」という言葉で迎えてくれます。

それからの君は、怒涛のようにいろんなことに挑戦させてもらうことになります。
例えば運動会。片麻痺にはできることが少ないけど、笛を吹くことであればお前にだってできるだろうと、半ば強制的にやらされた組体操の笛吹き。いつもは体育科の先生が組体操の指導でやる笛吹きです。そういう風に言われると火が付くのが君です。売り言葉に買い言葉。絶対先生よりもでっかい音を出してやろうと君は思う。実際の運動会ではやっぱり、先生よりは大きい音は出せないけれど、君は先生と抱き合って喜ぶんだ。

そこで喜びを得た君は、笛を吹くのだけでは物足りず、
やっぱり運動をやりたい!
と思うようになります。でも、やっぱり、片麻痺ではできるスポーツがなかなかない。それでも君はめげることはないんだ。

2か月間のリハビリの最中に見舞いに来てくださっていた、東久留米スイミングクラブの先生に「リハビリでも何でもいいから戻ってこい」と言ってもらえるでしょう。先生のその言葉のおかげで、君は水泳に戻ることになります。

それからの君はなんと、北京、ロンドン、リオパラリンピック日本代表に選ばれて、なんとなんと北京とロンドンではメダリストになれます。そして、なんとですよ、2020年には東京でオリンピック・パラリンピックが開催されるんです。今はそれに出られるかもしれないっていう、その途中なわけです!

マイナス思考じゃない君。だからこそ今の自分がいます。
後先考えずに猪突猛進。できちゃうでしょって思ったら突き進んでいく君。君のその突き進みっぷりは今も引き継いでいます。

今の自分は、水泳が仕事、いや、生活のほとんどになっています。苦しいときはもちろんやってきます。
「俺ってなんで水泳だけなんだろう」
「このままでいいのだろうか?」

でも、そんなときはいつも13歳の君を思い出します。
倒れてから初めて水に入った時のあの気持ちよさ!半身が不自由だけれど、自分で体を使っていろんなことができた喜び!30歳になった今、改めてその時の気持ちに立ち戻ろう、その時の気持ちを忘れてはいけないと思います。

13歳で君が倒れたからこそ、今の自分がいる。そして、これから先の自分がいる。当たり前のようだけど、考えて生きていかないとあっという間に人生が終わってしまう。
これからも、苦しいときは13歳の君を思い出しつつ、突き進んでやります!
13歳の倒れた君。本当にありがとう!

シェアする