和田拓という男

村田毅

日野レッドドルフィンズ / フランカー、ロック

拓は今まで出会った人の中でもなかなか珍しい人間で、それと同時に自分の持っていないものをたくさん持っている人間なのだよね。

とにかく誰に対しても優しい。嘘じゃないかと思うくらい。
知り合いたての頃は、それが胡散臭く感じていたけれど、知れば知るほどそれが本当なものだから、自然と仲良くなっていました。

学生時代にそれを強く感じたのが、4年生になりたての時。

学年ミーティングでのこと。

それまで同じ3年間を過ごしてきたのに、これでもかっていうくらい圧倒的に同学年からの信頼が絶大で、さすがにあれは引いた。(笑)
それでいて謙虚。なんなんだこいつっていう。
チームファーストな人間っていうのはこういう奴のことを言うのかと強く感じた。

大学4年の秋、10年ぶりに早慶戦に勝った時もそうだった。

164人もいる部員はそれぞれみんな違う感情を抱いていた。

試合に出場して勝って喜んでいる者。
もう次の試合に気持ちが向かっている者。
チームが勝った喜びと同時にそれ以上の悔しい気持ちに溢れている者。

試合後のチーム全体の円陣で、当時FWリーダーだった僕は、
「今日は喜んでまた次の試合頑張ろう」

と、当たり障りのないことを言った。

その後、拓は少し深刻そうな顔をしながら、

「わかっているから・・・。勝ったことで全員が喜んでいるとは限らないってことは出ていた選手もみんなわかっているから。だから、また来週からその思いを持って競争していこう。」

拓のコメントに、自分は虚しさを感じた。

いつだってチームメイトの為にプレーしていた拓。

「出られないチームメイトのために戦う」と、言うのは簡単だけれど、

試合終了直後の歓喜の瞬間。

グラウンドで抱き合うチームメイトを横に、真っ先に出られなかった選手たちのいるスタンドに向かってガッツポーズをしていた拓がいた。

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