「強くなりたい」

笠井武広

ALSOK / ウエイトリフティング日本代表

強くなりたい。

そんな欲求が幼少期から人一倍強かった。
ただその欲求が何なのか分からず、持て余したエネルギーを誤った方法で発散しては、親や他人に迷惑をかけてしまっていた。
そんな中学時代、ふとしたきっかけで担任の先生に誘われて始めたのが「ウエイトリフティング」。
その時の僕は、ウエイトリフティングから様々なことに気づかされるとは思ってもみなかった。

高校から本格的に競技に専念し、大学まで学生として競技に没頭した7年間。
ただひたすら目の前のバーベル、そして自分自身と向き合い続けた。
その中で、初めて言語化できた自らの欲求が、
「もっと強くなりたい」「成長したい」。
その気持ちは日に日に大きくなっていった。
それは競技だけではない。
生活面でも、勉強面でも、成長していくことがただただ楽しかった。
自分が何かで成長することに強く幸せを感じるということを、ウエイトリフティングを通して気づくことができた。
大学での4年間はその欲求に素直に寄り添い順調に記録を伸ばし、目標としていた全日本選手権でも優勝することができた。

しかし社会人一年目、行き詰まる。
それまでのようにウエイトリフティングを楽しめなくなっていた。
オリンピックがかかった選考会で結果が出なかった。
選考が終わり実家で休養を取っている間、何がいけなかったのか自問自答を繰り返し、なかなか答え見つからず悶々とした日々を過ごしていた。

そんなある日、落ち込んでいる僕に母親が言った言葉が今でも忘れられない。
「もう良いんじゃない?いつやめても良いんだから」
最初は驚いたが、本当に気持ちが楽になった。
今だから分かるが、仕事としてウエイトリフティングを始めてから強い使命感と束縛感を感じていた。
強くなるにつれてウエイトリフティングをやることで多くの人を巻き込んでいることは自分でも分かっていた。
だからこそ、結果を出そう出そうとするあまり完全に自分らしさを見失い、それが良い結果を遠ざけていたのかもしれない。
「強くなりたい」。
その純粋な気持ちが僕の原動力。
母にかけられた言葉で原点に帰ることができた。
やめても良い、その選択肢があることで、これまで以上にウエイトリフティングをしたいと思うようになった。
なぜならウエイトリフティングが好きだし、自分自身これを通してこれからまだまだ成長できる可能性を感じているからだ。

2020年自国開催のオリンピック
リオに出れなかった悔しさ
母に救われた一言

様々な感情が湧き上がる。
この感情を忘れず、残り2年自分の可能性を信じ全力を尽くしていく。
2020年までの道のり、自分だけではなく関わる人と共に楽しんで走っていければ最高だ。

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