和田拓という男

金子大介

キヤノンイーグルス / フッカー

高校、大学、社会人。

彼と一緒に人生の半分をラグビーと共に過ごしてきて、

彼の人柄に一番触れてきたかもしれない。

拓がどう思っているか分からないが、

僕は彼を心友だと思っている。

彼が引退する時、とても泣いた。

人間当たり前のことにはあまり意識がいかない。

当たり前が当たり前でなくなって初めて、当たり前だったことに感謝する。

僕にとって、拓と一緒にラグビーをすることが当たり前だった。

拓が選手でなくなって、

やっと彼がやってきたことの凄さ、

彼の存在が自分にはとってどれだけ大切だったかが分かった。

拓は國學院久我山高校、そして慶應大学で日本一を目指した仲間である。

そんな拓が社会人になっても、

キヤノン(当時トップリーグ下部リーグ在籍)を選んでくれて、

一緒にプレー出来ると分かった時、嬉しさだけでなく、

不思議な縁だなと感じたのを覚えている。

不思議というのも、高校時代、

同じラグビー部だったからといって格別仲が良かった訳ではない。

悪かったわけでもないが、

僕は中学からの内部進学で、拓は推薦。

クラスが一緒になることもなければ、帰る方向も違ったため、

一緒に行動するグループではなかった。大学でも同様だ。

だから社会人になっても特別なにかを意識したことはなかった。

中学の3年間を除いたら、ずっとチームに拓がいて、

特別意識なんてしていなかったけれど、

それが当たり前になっていたのだと思う。

僕自身まだまだ若くて、考えが子供で、

拓がやっていたことの凄さに、いなくなってようやく気づいてきた。

拓をすごいなと思ったエピソードは何個もあるが、そのうちの一つが、
トップリーグ昇格後、1年目の東芝との練習試合でのことだ。

まだまだトップリーグ昇格したばかりでチームの層は厚くなかった。
そのため、1年目の練習試合(Bチーム戦)で主要メンバーが出ない試合は大差がつくものばかりだった。

拓は試合が終わった後、

出場していたメンバーにかなりキツイ口調でダメ出しをしていた。

今日の試合は全然ダメだったという様な内容だったと思う。

ちなみに、拓はこの試合には出ていない。

練習試合は公式戦の出場時間が短い人が出るものだからだ。

僕はその試合に出ていたから、イラっとしたのを覚えている。
試合に出てもいない選手が監督のようなコメントをしていたから。

多くの先輩も、拓の発言に不満を抱いていた。

でも誰かが言わなければいけなかったことなのだと、今は思う。

当時はコメントばかりにベクトルが向き、結果として大差で負けている現実に目がいっていなかった。

チームがトップリーグに上がったばかりなのだから、上位チームに負けても仕方がないというような甘い雰囲気を拓は感じていたのかも知れない。

練習試合だからと言って、負けて良い試合はない。

ましてや応援してくれている人もいる。

当時の僕には分からなかったことも、今なら分かる。

それを拓はわずか2年目にして気づいていた。

そして、自ら率先してチームを変えようとしていた。

拓は学年に関係なく、意見が言える。

信念があってブレない。嫌われることを恐れない。

そして僕が一番すごいと思うのは、利己的でないこと。

チームファーストで決して我を主張しないこと。

これこそがチームスポーツの中で、一番難しいことだと思う。

それができる和田拓。

そんな彼を近くで見ていたからこそ、

今、僕はラグビー界に恩返しをしたいという気持ちになれている。

キヤノンに、慶應に、ラグビー界に、なくてはならない人。

それが、和田拓。

そんな彼と高校から今まで一緒に過ごせたことを誇りに思う。
彼がいたから、今の僕がある。

そして今後も、僕にとって当たり前の存在になった彼と、違う立場だろうと、

一緒に目標をたて、進んでいきたいと思う今日この頃。

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